日本中の野球、サッカー、バスケットボール、アイスホッケーのプロチームを地図に落としてみると、ほぼすべての都道府県に“地元チーム”が存在していることがわかります。
かつて、プロスポーツチームは大都市に集中していました。
しかし現在では、多くの地方都市にもクラブが根付き、地域にとって欠かせない存在になっています。
では、地元にプロスポーツチームがあることには、どのような意味があるのでしょうか。
本書は、オリンピックのような中央集権的なスポーツイベントと、各地域に根差したリーグスポーツを比較しながら、「スポーツと地方分権」について考察している一冊です。
ダービーマッチの事例も交えながら、スポーツが地域にもたらす価値について考えさせられます。
総合評価⭐⭐⭐⭐
読みやすさ ★★★★★
初心者向け ★★★★☆
情報量 ★★★★★
観戦が楽しくなる★★☆☆☆
おすすめ度 ★★★★☆
1.スポーツの中央集権
■ オリンピック
夏季オリンピックは、多くの場合、大都市もしくは首都で開催されます。
莫大な資金が必要となるため、そもそも開催できる都市が限られている。
これはまさに“スポーツの中央集権”の象徴だと感じます。
五輪開催に向けて、施設・住宅・インフラへの大規模投資が行われますが、その恩恵を最も受けるのは開催都市圏の住民です。
地方に住む人にとっては、「国全体のイベント」でありながら、距離を感じやすい構造でもあります。
■ 箱根駅伝
箱根駅伝は、関東学生陸上競技連盟(関東学連)加盟大学のみが参加できる大会です。
大会の成り立ちに理由はあるものの、結果として多くの有力な長距離ランナーが関東の大学へ進学する流れが生まれています。
全国規模の注目を集める大会でありながら、参加資格が地域的に限定されている。
これもまた、スポーツにおける中央集権の一例だと感じます
■ メディア
多くの大手メディアの本社は東京にあります。
地方メディアも存在しますが、全国放送のテレビ中継や大規模な取材体制は、どうしても関東キー局に集中しやすい。
国際試合の取材も、東京のスタッフが中心になることが多い。
スポーツの“見られ方”そのものも、東京中心で作られているのだと改めて感じます。
2.プロスポーツの地方分権
■ プロ野球
現在のNPB12球団は、
北海道・東北・愛知・広島・福岡に5球団
関東・関西に7球団
と、日本全国にある程度分散しています。
かつての関東・関西への集中と比べると、かなり地方分権が進んだ形です。
さらに、空白地域には独立リーグも存在しており、地域活性化や地方球界の発展に大きく貢献しています。
“プロスポーツがあること”自体が、地域にとって価値になっていることを感じます。
■ プロサッカー
Jリーグは、発足当初から「地域に根ざしたクラブづくり」を掲げてきました。
企業名ではなく地域名をチーム名に入れることで、“地域のクラブ”としての存在感を強くしています。
これは日本のプロスポーツの中でも、特に地方分権を強く意識した仕組みだと思います。
「地元のクラブを応援する」という文化を最も作ったのは、Jリーグかもしれません。
■ アイスホッケー・アジアリーグ
日本・韓国のクラブが所属する国際リーグであるアジアリーグ。
一方で、日本国内のクラブは日光、北海道、東北といった地域の顔でもあります。
国際リーグでありながら、地域密着でもある。
ローカルとグローバルが共存している、とても面白いリーグだと感じます。
3.感じたこと
■ 地域クラブの存続について
「地元チーム」があることは、
スポーツ振興
地域活性化
地域アイデンティティ
のどれを取っても大きな意味があります。
ただし、それを維持することは決して簡単ではありません。
特にJ3クラブなどは、経営基盤の弱さが大きな課題になります。
本書でもその点には触れられていますが、個人的には、経済学者である著者ならではの“具体的な解決策”をもっと聞いてみたかったと思いました。
■ 地域住民・地域社会による活性化
本書はどちらかというと、中央から地方を見る視点で書かれている印象があります。
世界中のダービーマッチの事例も紹介されていますが、多くは歴史的な地域間対立が背景にあります。
「地方分権」を本気で進めるなら、主役は地域社会と地域住民のはずです。
地元チームをどう盛り上げるのか。
地域活性化にどう活かすのか。
その具体的な方法について、もっと掘り下げた内容があればさらに面白かったと感じました。
まとめ
“地元チームがある”
それは単に近くで試合が見られる、という話ではありません。
地域に誇りが生まれ、共通の話題ができ、人が集まり、街が活気づく。
スポーツは、地域にとって文化であり、経済であり、アイデンティティにもなります。
中央に集まる大きなイベントももちろん魅力的ですが、日常の中にある「地元チーム」の存在こそ、人を幸せにする力があるのかもしれません。
スポーツを“観るもの”としてだけでなく、“地域をつくるもの”として考えるきっかけになる一冊でした。
書籍情報
題名:「地元チーム」がある幸福 ~スポーツと地方分権~
著者:橘木 俊詔
発行所:集英社
ISBN:978-4-08-721092-7
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