ラグビー | 『ラグビー質的観戦入門』書評 | 廣瀬俊朗

元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんが、2023年ラグビーW杯フランス大会を前に、「ラグビーをどう観ればもっと面白くなるのか」を解説した一冊。

技術的な説明だけでなく、代表キャプテンとしての経験をもとに、

  • チーム作り
  • 試合中の心理
  • 勝負どころでの考え方

まで語られているのが特徴です。

また、本書後半では2023年W杯出場国や開催都市についても紹介されており、日本のリーグワンで活躍する海外選手たちが、それぞれの代表チームでどんな役割を担っているのかも理解できる内容になっています。

総合評価⭐⭐⭐⭐

読みやすさ   ★★★★☆
初心者向け   ★★★★☆
情報量     ★★★★★
観戦が楽しくなる★★★★★
おすすめ度   ★★★★★

目次

1. 内容

■ 各ポジションの役割

ラグビーは15人で行うスポーツですが、ポジションによる役割の違いが非常に大きい競技です。

フォワード(FW)8人、バックス(BK)7人――
それぞれに求められる、

  • 身体能力
  • 技術
  • 判断力

が大きく異なります。

本書では、

「なぜ選手ごとに体格が違うのか」
「どんな役割を担っているのか」

が丁寧に説明されており、フィールド上の15人の意味が見えてきます。


■ 1試合を“6分割”して観る

廣瀬さんが提案している観戦術で特に面白かったのが、

「1試合を6つに分けて観る」

という考え方。

ラグビーは前後半40分ずつ、計80分。
それをさらに細かく区切ることで、試合の流れや心理戦が見えやすくなるといいます。


前半最初の10分

  • 気合が入りすぎていないか
  • 油断していないか
  • どちらが接点で優勢か

など、両チームのメンタルと戦術を確認する時間。


前半中盤20分

最初の10分を踏まえて、

  • キックを多用するか
  • ボール保持を重視するか

など、戦い方の変化を見る時間。


前半最後の10分

  • 優勢チームが流れを維持できるか
  • 劣勢チームが流れを変えられるか

に注目。

点差を踏まえて、どう前半を終わらせるかという“試合運び”が見えてきます。


後半最初の10分

ビハインド側が、逆転へ向けてどんな意図を持ってプレーしているかを見る時間。


後半中盤20分

選手交代が増え、試合が動きやすくなる時間帯。

  • 交代選手が流れを変えるか
  • フィットネス差が出始めるか

などに注目します。

特にFWの戻りの速さから、チームの体力状況が見えてくるという視点は面白かったです。


後半最後の10分

勝敗を左右するラスト10分。

  • リードしている側の締め方
  • 追う側のプレー選択

から、そのチームの“勝者の文化”が見えると解説されています。


■ 試合中の注目ポイント

本書では、試合中にどこを見るべきかも具体的に書かれています。

例えば、

  • キックオフ直後のウイングのタックル
  • 接点でどちらが前に出ているか
  • タックルを受けた後の倒れ方による攻撃継続性
  • スクラム優勢時の攻撃精度

など。

ラグビーは「前にパスできない」競技だからこそ、接点で前に出られるかどうかが、その後の攻撃全体に大きく影響する。

こうした“局面の積み重ね”で試合が動いていることがよく分かります。


■ ナショナルチームの作り方

本書では、日本代表のチーム作りについても触れられています。

ヘッドコーチが大きな方向性を示し、選手たちがコミュニケーションを重ねながら共通認識を作っていく。

さらに印象的だったのは、

「優勝」や「目の前の勝利」だけでなく、
「憧れられる存在になる」

という長期的・内発的な目標の重要性です。

短期的な勝利だけでは、W杯という大舞台を目標とした数年単位の代表強化は続かない。

この視点はスポーツだけでなく、組織作り全般にも通じる考え方だと思いました。


2. 感じたこと

■ ラグビーは“原則”で動いている

ラグビーは、一見すると人が入り乱れるスポーツに見えます。

しかし実際には、

  • 各ポジションの役割
  • 動きの原則
  • サポートの約束事

が明確に存在している。

だからこそ、複雑なパス回しや連続攻撃が成立しているのだと理解できました。


■ 試合全体を予想しながら観る面白さ

「1試合を6分割する」という観戦方法を知ることで、

目の前のプレーだけでなく、

  • 今どちらに流れがあるのか
  • 劣勢側は何を変えようとしているのか
  • 交代選手にはどんな意図があるのか

を考えながら観戦できるようになると感じました。

特に、負けている側のメンタルや戦術変更を見る視点は、試合理解をかなり深めてくれます。


■ 日本代表の“勝者の文化”

本書では、廣瀬さんがキャプテンだった時代と、リーチ マイケルが率いた時代のチーム作りの違いにも触れられています。

廣瀬さんは、リーチの“目の前の勝利”への執着に対して、少し異なる価値観を持っていたようにも感じました。

ただ、そのリーチの勝利への強烈な意識があったからこそ、

  • 2015年W杯での歴史的勝利
  • 2019年W杯ベスト8

という勝利につながり、
さらに廣瀬さんが考える内発的なメンタルの持ち方があったことで、日本代表に“勝つ文化”が根付いていったのだと思います。


おわりに

廣瀬さんは、試合をコーディネートするスタンドオフ出身ということもあり、ラグビーを非常にロジカルに分析しています。

ラグビーは、

  • 激しいタックル
  • 密集戦
  • フィジカルの迫力

が注目されがちなスポーツですが、本書を読むことで、

「なぜそのプレーを選んだのか」
「試合全体をどう設計しているのか」

まで見えてくるようになります。

局面だけでなく、“80分全体”を理解しながら観戦する。

そんなラグビーの面白さを教えてくれる一冊でした。

書籍情報

題名:ラグビー質的観戦入門
著者:廣瀬俊朗
発行所:角川新書
ISBN:978-4-040-82456-7

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この記事を書いた人

スポーツ観戦と読書が好きです。戦術や駆け引き、選手の思考まで深く楽しんでいます。
スポーツ本の書評や観戦術を通して、スポーツをもっと深く、面白くする視点を発信しています。

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