スポーツビジネスの現状と将来性について、
「マネジメント」「スタジアム」「キャリア」「地方創生」
という4つの観点から解説されている一冊です。
日本ではまだ、「スポーツ=競技」「スポーツ=夢を追うもの」という認識が強く、スポーツを“ビジネスモデルの一つ”として捉える視点はそれほど一般的ではありません。
本書では、スポーツをきちんと産業として成立させるには何が必要なのか、そして今後どのように発展していくべきかが語られています。
夢を追うだけでなく、きちんと“働く場”にできるのか。
2019年のラグビーワールドカップ2019、そして2021年の東京オリンピックを経て、スポーツを取り巻く環境がどう変わっていくのか。
スポーツ好きとして、しっかり考えていかなければならないと感じさせられた一冊でした。
総合評価⭐⭐⭐⭐
読みやすさ ★★★★☆
初心者向け ★★★☆☆
情報量 ★★★★☆
観戦が楽しくなる★★☆☆☆
おすすめ度 ★★★★☆
1.印象に残ったこと
■ スタジアムをプロフィットセンターにする
MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島や横浜スタジアムのように、球場を球団が所有することで、スタジアムの役割は大きく変わってきています。
かつては「大きなコスト」でしかなかったスタジアムが、今では“利益を生み出す場所”になっています。
観戦体験そのものをサービスとして高めることで、来場者数の増加につながっているのです。
単に試合を見る場所ではなく、
「また来たい」
「ここで過ごしたい」
と思わせる空間づくり。
この発想は、プロ野球に限らず、あらゆるスポーツ施設に必要だと感じました。
■ スポーツ組織に必要な人材
「スポーツチームで働きたい」と考える人は多くいます。
しかし実際には、応募者の志望動機と、チーム側が求める仕事の内容に大きなズレがあり、ミスマッチが起きている。
これがスポーツ業界の現実だといいます。
“スポーツが好き”であることはもちろん大切ですが、それだけでは足りない。
例えばプロ野球球団は、競技団体であると同時に、エンターテインメント産業でもあります。
大切なのは、
「どうすれば観客をもっと楽しませられるか」
を考えられる人材。
この視点は、スポーツ業界を志望する人ほど持つべきだと感じました。
■ 地方創生への関わり方
地方を盛り上げるために、スポーツができることは非常に多い。
スタジアム建設のようなハード面もありますが、より重要なのはソフト面だと本書では語られています。
たとえば、
地域を象徴する存在として、多くの人の共通の話題になること
(著者はこれを「ボンド効果」と呼んでいます)
そして、
スポーツが持つ情報発信力を活かすこと
(著者は「アンプ効果」と呼んでいます)
地域に「応援する対象」があることは、人をつなぎ、街の空気を変える。
これは以前読んだ“地元チーム”に関する本とも重なる視点で、とても共感しました。
2.疑問点
■ アスリートのキャリア論
本書では、スポーツ業界のキャリア論として、アスリートのキャリアについても多く語られています。
もちろん、スポーツ業界の中心にいるのはアスリートです。
ただ、本書全体を通して著者が伝えたいのは、
「スポーツをビジネスとして捉え、その拡大のために必要な人材を、異業種も含めて採用していくこと」
だと感じました。
そのため、アスリートのキャリアだけでなく、
- ビジネスとして見たときに、どんな人材が不足しているのか
- 欧米のトップクラブと比べて、日本のクラブには何が足りないのか
こういった視点を、もっと深く掘り下げてほしかったと思います。
スポーツを産業として成長させるには、“競技の外側”を支える人材こそ重要になるはずです。
まとめ
スポーツを仕事にする。
その言葉には夢があります。
しかし、本当に大切なのは、夢だけではなく“持続可能な仕組み”を作ることなのだと思います。
スタジアム経営、人材育成、地方創生、キャリア設計。
どれも華やかな競技の裏側にあるものですが、そこが強くならなければ、スポーツビジネスは成長しません。
スポーツを「見るもの」「応援するもの」だけではなく、
「支えるもの」
「産業として育てるもの」
として考える視点を持つこと。
それが、これからの日本のスポーツには必要なのだと感じました。
書籍情報
題名:スポーツビジネス15兆円時代の到来
著者:森 貴信
発行所:平凡社
ISBN:978-4-582-85915-7

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