スポーツ全般|『今こそ「スポーツとは何か?」を考えてみよう』書評 | 玉木 正之

「サッカー」とは、そもそもどんな意味なのか。
「バレーボール」の“バレー”とは何を指しているのか。

普段当たり前のように使っているスポーツの名前も、いざ聞かれるとうまく説明できないことがあります。

では、そもそも「スポーツ」とは何なのか。

私たちはつい「スポーツ=体育」と考えがちですが、かつて“スポーツの祭典”であるオリンピックには「芸術競技」が存在していました。

本書は、そんな「誰もがわかっているようで、実はよくわかっていない“スポーツとは何か”」について、書籍・音楽・美術など、一般的には芸術と呼ばれる分野も含めながら、広い視点で解説してくれる一冊です。

多くのスポーツ好きが読むべき本だと感じました

総合評価⭐⭐⭐

読みやすさ   ★★★☆☆
初心者向け   ★★★★☆
情報量     ★★★★★
観戦が楽しくなる★★★★☆
おすすめ度   ★★★☆☆

目次

1.印象に残ったこと

■ スポーツとは何か?

「スポーツ」の語源は、ラテン語の
デポルターレ(DEPORTARE)

と言われており、意味は
「日常的な生活(労働)を離れた非日常の時空間」。

つまり、体を動かすことだけではなく、芸術も含めて“非日常”そのものがスポーツだという考え方です。

この視点に立つと、「スポーツ=運動」という固定観念が大きく揺さぶられます。

では、なぜ多くの日本人は「スポーツ=体育」と捉えているのか。
そこには日本独自の教育の歴史があることが分かります。


■ スポーツと民主主義

本書では、スポーツという文化は民主主義社会からしか生まれない、という説が紹介されています。

古代オリンピックを開催していたギリシャ。
近代オリンピック発祥の地であるイギリス。

形式は違っても、どちらも民主主義社会でした。

多くのスポーツ競技は、戦争や争いを“暴力なし”で解決するために生み出されたもの。

つまり、スポーツの根底には
「暴力に頼らず、ルールによって競う」
という民主主義的な考え方があるということです。

では、ボクシングやレスリング、相撲などの格闘技はどうなのか。

この問いも非常に興味深く感じました。


■ スポーツと芸術の関係性

本書では、スポーツと関わりのある書籍、音楽、美術作品が数多く紹介されています。

私たちはよく
「体育会系」と「文化系」
と分けて考えます。

しかし実際には、その境界はとても曖昧で、どちらも同じ“スポーツ”として捉えられる。

この視点はかなり新鮮でした。

2.現代スポーツの問題点

■ 両性具有の女子選手の取り扱い

陸上競技を中心に、近年大きな議論となっている両性具有選手や性別移行選手の問題。

多くの競技では公平性を保つためのルール作りが進められていますが、

「女子選手」として扱うことは本当に公平なのか。

簡単には答えの出ない、とても難しいテーマです。

スポーツが“公平性”を前提としている以上、避けては通れない問題だと感じます。


■ ドーピング

ドーピング問題は今に始まったことではなく、過去には旧ソ連や東側諸国でも疑惑が残っています。

オリンピックのような国際大会での活躍は、

「個人の名誉」だけでなく
「国家の栄誉」

にもつながる。

勝利への強い執着を持つアスリートにとって、ドーピングは単なる身体の問題ではなく、“心”の問題でもあるのだと感じます。


■ eスポーツはスポーツか

近年よく耳にする
「eスポーツ」

身体性が薄いことから、スポーツとは見なさないという意見も多くあります。

しかし、もしスポーツを
「日常から離れた非日常の空間」
と定義するならば、eスポーツもまたスポーツではないのか。

この問いは、これからさらに議論されていくテーマだと思います。

3.まとめ

「スポーツとは何か?」

本書を読むまでは、答えられそうで答えられない問いでした。

改めて考えてみると、自分もかなり感覚的にこの言葉を使っていて、その根底にはやはり「体育」というイメージがありました。

多くの日本人は
「スポーツ=体育」
として育っています。

しかし実際には、それだけではありません。

各競技の語源やルーツ、書籍・音楽・美術といった芸術分野、さらには政治や社会の仕組みまで含めて、スポーツは成り立っている。

本書はそれを丁寧に教えてくれます。

著者は、現代のスポーツが本来持っていた文化性や芸術性から離れ、経済的・国家間競争的な活動へと偏っていることを「暴走」と表現しています。

その言葉には強く考えさせられました。

改めてスポーツの意義を見つめ直し、“暴走”だけではない発展について考えていきたい。

そんなきっかけを与えてくれる一冊でした。

書籍情報

題名:今こそ「スポーツとは何か?」を考えてみよう!
著者:玉木 正之
発行所:春陽堂書店
ISBN:978-4-394-99001-7

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この記事を書いた人

スポーツ観戦と読書が好きです。戦術や駆け引き、選手の思考まで深く楽しんでいます。
スポーツ本の書評や観戦術を通して、スポーツをもっと深く、面白くする視点を発信しています。

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