テニス|『ジョコビッチはなぜサーブに時間をかけるのか』書評 | 鈴木 貴男

スポーツのライブ観戦ができなくなった2020年3月下旬、「観戦スキルを磨きたい」と思い、本を探していたときに出会った一冊です。
帯に書かれていた「精神論ばかりの解説はもう飽きた!」という言葉に惹かれて購入しました。

私は2017年から錦織圭選手の試合を中心にテニス観戦にはまり、もっと深く試合を理解したいと思っていました。そんな自分にぴったりの内容でした。

総合評価⭐⭐⭐⭐

読みやすさ   ★★★★★
初心者向け   ★★★★☆
情報量     ★★★★☆
観戦が楽しくなる★★★★★
おすすめ度   ★★★★☆

目次

1.内容

■BIG3の強さの秘密とは?

ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ。
15年以上にわたり男子テニス(ATPツアー)とグランドスラムを支配してきた3選手の強さの秘密が解説されています

■錦織圭の強さの秘密とは?

日本史上最高の男子テニスプレーヤーともいえる錦織圭選手。
その強さの背景にある「判断」と「駆け引き」が語られます。

■クロスとストレート

なぜクロスコートのラリーが続くのか。
そこから、どのタイミングでダウン・ザ・ライン(ストレート)で勝負に出るのか。

■時間を奪うプレーと時間を作るプレー

ライジングショットやスライスショットなど、
「相手の時間を奪うプレー」と「自分の時間を作るプレー」の違いについて。

■コート・トイレットブレイク・サスペンション

外部環境やインターバルが試合にどのような影響を与えるのか。


テレビでテニス観戦をしていると、実況や解説者がよく話題にするものの、なんとなくしか理解できていなかったテーマ。
それらを元プロテニスプレーヤーである著者が具体的に説明してくれるので、とても理解しやすい内容になっています。

2.印象に残ったこと

■ クロスコートの打ち合いがなぜ続くのか

クロスコートの打ち合いは「安全な選択肢」であり、相手の様子を探るショット。
ただ続けているのではなく、その中で攻めるチャンスを狙っているという視点が印象的でした。

■ コートサーフェースによる配球の考え方

クレーコートは高く跳ねる。
グラスコートは低く弾まない。

選手はコートサーフェースに合わせて配球パターンを変えますが、打ち方によって得意・不得意な球種があるため、得意コートと不得意コートが生まれる。試合を見る視点が一段深くなりました。

■ 失敗してもドロップショットを打つ意味

たとえポイントを取れなくても、今までと異なる配球を見せることで、相手に考えさせる選択肢を増やす。

「その1ポイント」だけでなく、「試合全体の流れ」を作るための一手だと知り、とても面白く感じました。

3.疑問点・書かれていないこと

■ アンディ・マリーのショット選択技術

本書執筆時、マリー選手は現役続行が不透明だった時期だったからか、解説はほとんどありませんでした。

トッププロたちが「ショット選択のうまさ」で名前を挙げることも多い選手なので、ぜひ詳しく知りたかったです。

■ 女子テニス(WTAツアー)の視点

本書の例はほとんどが男子プロ選手です。

基本的な考え方は共通だと思いますが、女子ツアーではまた違った試合の見方や駆け引きがあるのか。
そこも知りたくなりました。

終わりに

シングルスは1対1。
試合中はコーチのアドバイスもなく、男子グランドスラムの5セットマッチでは3時間以上に及ぶこともあります。

その間、目の前の1ポイントを取るためのショット選択をしながら、試合全体を通じた流れや駆け引きまで、すべてを自分ひとりで考え続ける。

試合後のインタビューで選手たちがよく「タフマッチだった」と語りますが、本書を読んで、その言葉の重みを改めて感じました。

「自分で選択したショットなのか」
「相手に選択させられたショットなのか」

そんな視点を持って観戦することで、テニスはさらに面白く、深く見えてくる。
そう感じさせてくれる一冊でした。

書籍情報

題名:ジョコビッチはなぜサーブに時間をかけるのか
著者:鈴木 貴男
発行所:集英社
ISBN:978-4-08-721099-6

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この記事を書いた人

スポーツ観戦と読書が好きです。戦術や駆け引き、選手の思考まで深く楽しんでいます。
スポーツ本の書評や観戦術を通して、スポーツをもっと深く、面白くする視点を発信しています。

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