テニス観戦本|『ジョコビッチはなぜサーブに時間をかけるのか』鈴木 貴男【1冊目】
スポーツのライブ観戦が出来なくなった3月下旬、観戦スキルを磨こうと本を探しているときに「精神論ばかりの解説はもう飽きた!」の帯に惹かれて購入した一冊。
2017年から錦織圭選手の試合を中心にテニス観戦にはまっており、さらにテニス観戦力を高めたいと思っている自分にぴったりの1冊であった。
1.内容
■BIG3の強さの秘密とは?
ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル・ノバク・ジョコビッチ 15年以上にわたって男子テニス(ATP)ツアーならびにグランドスラムを支配している3選手の強さの秘密とは
■錦織圭の強さの秘密とは?
日本史上最高の男子テニスプレイヤーである錦織圭の強さの秘密とは
■クロスとストレート
クロスコートラリーによる駆け引きからダウン・ザ・ラインによる勝負のタイミングとは
■時間を奪うプレーと時間を作るプレー
ライジングショット、スライスショット、時間を奪うプレーと時間を作るプレーとは
■コート・トイレットブレイク・サスペンデット
外部環境やインターバルによるプレーへの影響とは
本書ではテレビでテニス観戦をしていると実況、解説者がよく話題に出すが、うまく理解できていなかったこれらのテーマについて、プロテニスプレーヤーによる説明がなされ、理解できるような内容になっています。
2.印象に残ったこと
■クロスコートの打ち合いがなぜ続くのか
クロスコートの打ち合いは安全な選択肢であり、様子を伺うショット
打ち合いの中で攻めるチャンスを狙っている
■コートサーフェースの違いによる配球の考え方
クレーコートは高く跳ねる。グラスコートは低く弾まない
コートサーフェースに合わせて配球パターンを変えていくが、選手の打ち方によって得意不得意な球種があるため、得意コート、不得意コートが生じる。
■失敗してもドロップショットと打つ意味
ポイントが取れなかったとしても、今までと異なる配球構成とすることで相手が考える選択肢を増やす効果がある。
3.疑問点・書かれていないこと
■アンディ・マリーのショット選択技術
鈴木選手が本書を執筆された際に、マリー選手は現役続行が決まっていなかったからかと思うが、トッププロがショット選択のランキングでベストプレーヤーに挙げることが多い、マリー選手の解説はなし。
■女子テニス(WTA)ツアー選手の解説
ほとんどの説明は男子プロ選手を例に行われている。基本的な考え方は同じであろうが、女子ツアー選手の場合は異なる試合の見方があるのであれば知りたい。
終わりに
シングルスの場合は1対1、試合中はコーチのアドバイスも許されていないテニスの試合は、男子グランドスラムの5セットマッチでは3時間以上に及ぶ。
その間、直近のポイントを取るためのショット選択と駆け引きを考える一方で試合全体を通じた流れや駆け引きをすべて自分ひとりで考えるテニスプロ。
よく試合後のインタビューで「タフマッチ」と感想を言っているが、本書を読んでまさにタフな競技であると改めて感じた。
自分で選択したショットなのか、相手に選択させられたショットなのか、そのあたりも考えながらテニスを見ることで、さらにテニスを考えながら深く観れるようになると感じた。
書籍情報
題名:ジョコビッチはなぜサーブに時間をかけるのか
著者:鈴木 貴男
発行所:集英社
ISBN:978-4-08-721099-6
目次
序章 テニスの醍醐味とは何か
第1章 この選手のここを見よ -錦織、フェデラー、ナダル、ジョコビッチ
第2章 選手たちはどんな環境で戦っているのか
第3章 この「駆け引き」に注目すると試合は何倍も面白い
終章 デビスカップで日本が優勝する日