スポーツビジネス『スポーツビジネス15兆円時代の到来』森貴信【8冊目】

 スポーツビジネスの現状と将来性について、マネジメント、スタジアム、キャリア、地方創生の4つの観点から解説が行われている1冊。スポーツビジネスがビジネスモデルの1つであるという認識が薄い日本において、この先どのようにしたらビジネスの1つとなるかについて語られている。
 夢を追うだけでなく、きちんと働く場にできるか。2019年のラクビーW杯、2021年の東京オリンピック後にスポーツを取り巻く環境がどのように変化していくか、スポーツ好きとして考えていかなくてはいけないと感じさせられた1冊であった。

1.印象に残ったこと

■スタジアムをプロフィットセンターにする
 マツダスタジアム、横浜スタジアムなど球場をプロ野球球団が所有することで、球団経営上の大きなコストに過ぎなかったスタジアムの役割が大きく変わってきている。サービスの場としての価値が高まったことが、近年の入場者数増加の要因となっており、プロ野球開催スタジアム以外にもこのような観客のことを第一に考えたスタジアム構築が望まれてきている。

■スポーツ組織の人材
 スポーツチームで働きたいと考える人は多くいるが、スポーツチームにおけるジョブ内容と応募者の志望動機にずれがあり、ミスマッチが起こっているというのがスポーツチームで働くということの現状となっている。スポーツが好きということも重要ではあるが、例えばプロ野球球団においてはエンターテインメント産業の1つであるという意識を持ち、観客をいかに楽しませることができるかを考えることのできる人材を採用していく必要がある。

■地方創生への関わり方
 地方を盛り上げるためにスポーツができることは多くある。スタジアムを中心としたハード面もあるが、より重要になってくることは街、地域を象徴するものとして多くの人の共通の話題となったり(筆者は「ボンド効果」と呼んでいる)、スポーツの情報発信能力(筆者は「アンプ効果と呼んでいる)の活用などのソフト面の活用である。

2.疑問点

■アスリートのキャリア論
 スポーツ業界のキャリア論において、アスリートのキャリアについて論じられている箇所がある。スポーツ業界の中心はもちろんアスリートではあるが、本書を通じた筆者の主張はスポーツをビジネスとしてとらえ、ビジネス拡大のために必要な人材を異業種含めて採用していくことにあると感じる。そのため、アスリートのキャリア論も大事ではあるが、ビジネスとしてとらえた場合にどのような人材が不足しているのか、特に欧米のトップクラブと比較して日本のクラブは何が足りないのかを掘り下げて論じてほしいと感じた。

書籍情報

題名:スポーツビジネス15兆円時代の到来
著者:森 貴信
発行所:平凡社
ISBN:978-4-582-85915-7

目次

はじめに
第1章 スポーツビジネスは有望化 -『日本再興戦略2016』で描かれる未来
第2章 マネジメント論 - 日本のスポーツマネジメント
第3章 スタジアム論 - スポーツビジネスを飛躍させるトレンド
第4章 スポーツ業界のキャリア論 - スポーツのその先を考える人になる
第5章 地方創生論 - スポーツは地方創生に有効か
おわりに

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